2026-27シーズンの千葉ジェッツの開幕ロスターが確定しました。外国籍選手は総入れ替え、指揮官も欧州仕込みのアドリアン・コヴァーチHCに交代——これは単なる選手の入れ替えではなく、チームのスタイルそのものを変えにいく編成だと感じます。この記事では、昨季(2025-26)のチームスタッツと過去のデータを見比べながら、今季の千葉ジェッツがどんなバスケットを展開するのかを考えてみます。
※スタッツは千葉ジェッツ公式サイトのクラブ成績(B1レギュラーシーズン)に基づきます。編成の評価・見通しは筆者の主観です。
2026-27 開幕ロスター(15名)
| 選手 | ポジション/身長 | 区分 |
|---|---|---|
| 富樫勇樹 | PG/167cm | 継続 |
| 瀬川琉久 | PG/184cm | 継続 |
| 原修太 | SG・SF/187cm | 継続 |
| 田代直希 | SG・SF/188cm | 継続 |
| 菅野ブルース | SG/200cm | 継続 |
| 渡邊雄太 | SF・PF/206cm | 継続 |
| 金近廉 | SF/196cm | 継続 |
| 荒尾岳 | PF/198cm | 継続 |
| 深水虎太郎 | SF/187cm | 継続(ユース育成特別枠) |
| 菅原佳依 | SF/191cm | 新加入 |
| 佐藤巧 | PF/198cm | 新加入 |
| ウィリアムス ニカ | C/203cm | 新加入(帰化選手) |
| ブランドン・ランドルフ | SG/198cm | 新加入(外国籍) |
| ネイト・ウィリアムズ | SF/196cm | 新加入(外国籍) |
| マット・コステロ | C・PF/208cm | 新加入(外国籍) |
日本人の主力はほぼ継続。一方で、昨季の外国籍だったジョン・ムーニー、ディー・ジェイ・ホグ、ナシール・リトルはいずれも退団し、外国籍は3人とも入れ替わりました。
昨季2025-26のスタッツを振り返る
まず、昨季の千葉ジェッツがどんなチームだったかを数字で確認します。成績は42勝18敗・東地区2位。開幕10連勝と好スタートを切りながら、チャンピオンシップは長崎ヴェルカに敗れ、セミファイナルで姿を消しました。
| 項目 | 2025-26(昨季) | 2020-21(優勝時) | 増減(昨季−優勝時) |
|---|---|---|---|
| 成績 | 42勝18敗 | 43勝14敗 | — |
| 平均得点 | 84.3 | 89.0 | -4.7点 |
| 平均失点 | 76.8 | 78.3 | -1.5点(失点減=良化) |
| FG成功率 | 46.1% | 47.8% | -1.7ポイント |
| 2P成功率 | 54.6% | 55.1% | -0.5ポイント |
| 3P試投数 | 28.6本 | 23.8本 | +4.8本 |
| 3P成功率 | 35.1% | 34.9% | +0.2ポイント |
| フリースロー試投 | 17.8本 | 22.7本 | -4.9本 |
| 平均アシスト | 21.5 | 21.2 | +0.3本 |
| 平均リバウンド | 39.9 | 40.8 | -0.9本 |
| 平均ターンオーバー | 11.5 | 11.9 | -0.4本(ミス減=良化) |
比較対象は、クラブがBリーグ初制覇を果たした2020-21シーズン(43勝14敗)です。こうして並べると、昨季の千葉ジェッツがどんなチームだったかがはっきり見えてきます。
昨季は「3ポイントは増えたのに、得点は減った」
意外に思われるかもしれませんが、3ポイントは優勝時より増えています(23.8本→28.6本、成功率もほぼ同じ)。今のバスケの流れどおり、外角の比重は着実に高まっているわけです。
それなのに平均得点は89.0点から84.3点へ、4.7点も落ちています。理由は数字にはっきり出ていて、ひとつはフリースローの試投が22.7本→17.8本と約5本減ったこと。もうひとつはFG成功率が47.8%→46.1%とわずかに下がったことです。つまり昨季は、リングにアタックして相手のファウルを誘う回数が減り、外から打つ機会が増えた——その分だけ、確実に取れる点が目減りしていたと読み取れます。
一方で守備は堅く、失点は78.3→76.8と優勝時よりむしろ良化。ターンオーバーも減っており、「守れるし、ミスも少ない。ただ、あと一歩点が伸びない」——これが昨季の千葉ジェッツを数字で表した姿だと思います。
退団した外国籍3人が残した「穴」を数字で見る
今季を占ううえで避けて通れないのが、外国籍3人が丸ごと入れ替わったという事実です。まず、いなくなった3人が昨季どれだけの仕事をしていたのかを確認しましょう。
| 選手 | 出場 | 平均得点 | リバウンド | アシスト | 3P(本/試投) | FT試投 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| ディー・ジェイ・ホグ | 57試合 | 16.5 | 6.0 | 3.7 | 2.5/6.6(38.7%) | 2.8 |
| ナシール・リトル | 53試合 | 16.5 | 7.7 | 2.1 | 1.4/4.3(32.3%) | 4.5 |
| ジョン・ムーニー | 28試合 | 14.3 | 11.3 | 3.3 | 0.2/0.5(38.5%) | 3.5 |
| 3人の合計 | — | 47.3 | 25.0 | 9.1 | 4.1/11.4 | 10.8 |
チーム平均84.3点のうち、3人で47.3点——実に半分以上を外国籍3人が生み出していた計算になります。リバウンドも25.0本で、チーム全体(39.9本)の6割超。この穴を新戦力で埋めなければならないのが、今季の大前提です。
さらに注目したいのがフリースローの試投数。3人合計で10.8本と、チーム全体(17.8本)の6割を占めていました。とくにリトル選手の4.5本、ムーニー選手の3.5本は、リングに突っ込んでファウルをもらう「体を張る仕事」の証です。前の章で見た「フリースローが減ると得点が伸びない」という構図を考えると、この役割を誰が引き継ぐのかは今季の隠れた重要ポイントになります。
新戦力は「穴」を埋められるか|タイプ別の比較
では、新しく加わった4人(外国籍3人+帰化選手1人)はどんなタイプなのでしょうか。退団組と役割を並べてみます。
| ポジション | 昨季(退団) | 今季(新加入) | タイプの変化 |
|---|---|---|---|
| ビッグマン | ジョン・ムーニー (リバウンド11.3本の職人) | マット・コステロ ウィリアムス ニカ | ゴール下専業 → 外角も打てるビッグ+ベテランの2枚体制 |
| フォワード | ナシール・リトル (16.5点・7.7reb) | ネイト・ウィリアムズ (昨季NBA・3P43.3%) | 身体能力型 → シュート力型 |
| ウイング/ガード | ディー・ジェイ・ホグ (16.5点・3P38.7%) | ブランドン・ランドルフ (ドイツ得点王19.0点) | 得点源 → 同じく得点源(役割は近い) |
並べて見えてくるのは、「守備・リバウンドの職人」から「点を取れる選手」へシフトしたという傾向です。とくにムーニー選手の11.3リバウンドは代役を立てるのが難しく、コステロ選手とニカ選手の2人でどう分担するかが鍵になります。逆に得点面では、ドイツ得点王のランドルフ選手、NBA帰りのウィリアムズ選手と、単独で点を取れる駒は増えた印象です。
ポジション別の層の厚さをチェック
ポイントガード:富樫・瀬川の2枚
富樫勇樹選手(昨季9.6点・4.6アシスト)に、瀬川琉久選手が続きます。ゲームをコントロールする専門職が実質2人という構成なので、富樫選手の負担は小さくないはずです。瀬川選手がどこまで出場時間を伸ばせるかは、シーズンを通した戦いを考えるうえで重要になります。
ウイング:一番の激戦区
渡邊雄太(13.5点・4.8reb)、金近廉、原修太、田代直希、菅野ブルース、菅原佳依、ネイト・ウィリアムズ、ブランドン・ランドルフ——数えると8人。ロスターの半分以上がウイングという構成です。出場時間の奪い合いは相当に激しく、若手の金近選手や新加入の菅原選手にとっては勝負のシーズンになります。
ビッグマン:コステロ・ニカ・佐藤・荒尾
コステロ選手とニカ選手が軸、そこに新加入の佐藤巧選手とベテランの荒尾岳選手が控えます。人数としては足りていますが、昨季のムーニー選手のように「毎試合2桁リバウンドを計算できる選手」がいるかどうかは、開幕してみないと分かりません。ここが今季最大の注目点だと思います。
今季の編成が語る「狙い」|アップテンポの再構築
ここで今季の新戦力を見ると、編成の意図が見えてきます。
- マット・コステロ(C・PF/208cm):3ポイントも打てる“ストレッチビッグ”。昨季はバレンシアでスペイン王者&ユーロリーグ4強。
- ネイト・ウィリアムズ(SF/196cm):昨季までNBAウォリアーズ。3ポイント成功率43.3%のシューター。
- ブランドン・ランドルフ(SG/198cm):ドイツBBL得点王(平均19.0得点)。3ポイントとドライブが武器。
- ウィリアムス ニカ(C/203cm):帰化選手。リバウンドとゴール下を支えるベテラン。
並べてみて気づくのは、4人中3人が「外角シュートを持っている」ことです。とくに大きいのがコステロ選手。センターが3ポイントラインまで出ていけると、相手の一番大きな選手をゴール下から引きはがせます。すると、ゴール周辺にスペースが生まれ、富樫選手や渡邊選手が切り込みやすくなる——現代バスケットの定石です。
加えて、コヴァーチ新HCが直前まで在籍したバレンシアは、アップテンポなスタイルでスペイン国内リーグを制したチーム。そのバレンシアでコステロ選手とコヴァーチHCは同じチームで戦っていました。指揮官の狙いを体で知る選手がいるのは、新しいスタイルを浸透させるうえで大きな強みになります。
今季はどんなバスケットになりそうか|3つの予想
① 3ポイントの本数が増える
シューターを3人補強し、センターまで外角を打てる編成です。昨季の28.6本からさらに増えて、30本台に乗ってくる可能性は十分にあると見ています。ただ、大事なのは本数そのものより質。コステロ選手が相手のビッグマンを外に引き出せば、空いたゴール下に富樫選手や渡邊選手が切り込める——3ポイントとリングへのアタックが両立すれば、昨季減っていたフリースローも自然と戻ってくるはずです。
② 得点ペースが上がり、点の取り合いが増える
アップテンポを志向するなら、攻撃の手数が増える分だけ相手の攻撃回数も増えます。昨季の「失点76.8」という堅い守りの数字は、多少上がることを覚悟しておいたほうがいいかもしれません。それでも、80点台後半〜90点を狙える打ち合いは、見ていて楽しいバスケットになるはずです。
③ 序盤は「かみ合わせ」の時間が必要
ここは正直に書いておきます。外国籍3人が総入れ替えで、HCも新任。日本人の主力が残っているとはいえ、新しいスタイルが浸透するには時間がかかるものです。昨季のような「開幕10連勝」を期待しすぎず、プレシーズンから開幕1か月は“作り上げていく過程”を楽しむくらいの気持ちがちょうどいいと思っています。だからこそ、8月のプレシーズンゲームは見逃せません。
開幕スターター5人を予想してみる
ここからは完全に筆者の予想です。あくまで「こうなったら面白い」という一ファンの見立てとして読んでください。
| ポジション | 予想 | 理由 |
|---|---|---|
| PG | 富樫勇樹 | チームの心臓。ここは動かないはず |
| SG | ブランドン・ランドルフ | ドイツ得点王。ホグ選手が担っていた得点源の役割 |
| SF | ネイト・ウィリアムズ | NBA帰りの3P43.3%。外角で広げる役 |
| PF | 渡邊雄太 | 攻守の柱。日本代表でも中心 |
| C | マット・コステロ | コヴァーチHCの戦術を熟知。ストレッチビッグ |
この5人が並ぶと、5人全員が3ポイントを打てる布陣になります。富樫選手は昨季1試合平均6.0本の3ポイントを放ち(成功2.1本・34.5%)チーム最多クラス、渡邊選手も4.7本。そこにランドルフ選手、ウィリアムズ選手というシューターが加わり、さらにセンターのコステロ選手まで外角を持っています。
相手からすると、コート上のどこも空けられない状態です。とくに大きいのが、相手のセンターをゴール下から引きはがせること。ゴール周辺にスペースが生まれれば、富樫選手や渡邊選手が切り込みやすくなり、前の章で見た「減ってしまったフリースロー」を取り戻すことにもつながります。
ベンチには、ゴール下を締めるウィリアムス ニカ選手、経験豊富な原修太選手・田代直希選手、そして伸び盛りの金近廉選手が控えます。Window3で「セカンドユニットの得点力」が日本代表の課題として見えたように、控えメンバーが得点できるかどうかは、長いシーズンを戦ううえで大きな意味を持ちます。金近選手の成長に期待したいところです。
注目したい数字|シーズン中はここを見よう
| チェック項目 | 昨季の数字 | 見どころ |
|---|---|---|
| 3P試投数 | 28.6本 | 30本を超えてくればスタイル転換の証拠 |
| 平均得点 | 84.3点 | 89点に近づけば優勝時(2020-21)の水準 |
| 平均失点 | 76.8点 | 80点を大きく超えないか(守備の代償) |
| フリースロー試投 | 17.8本 | 20本超えならリングへの圧力が戻った証拠 |
| アシスト | 21.5 | ボールが動いているかの目安 |
試合を観ながらこの5つを気にしてみると、「今日はいつもと違うな」が分かるようになって、観戦が何倍も面白くなります。
まとめ
- 2026-27の千葉ジェッツは日本人主力を継続しつつ、外国籍3人を総入れ替え。HCもコヴァーチ体制に。
- 昨季は42勝18敗・東地区2位。得点84.3・失点76.8と堅実だったが、CSはセミファイナルで敗退。
- 初優勝の2020-21と比べると、3Pは増えた(23.8→28.6本)のに得点は4.7点減。フリースロー試投が約5本減ったのが大きい。
- 新戦力は外角を持つ選手が中心。ストレッチビッグのコステロ加入で、コートを広く使う攻撃が期待できる。
- 退団した外国籍3人が昨季の得点の半分以上(47.3点)とリバウンドの6割(25.0本)を担っていた。この穴埋めが今季の大前提。
- 新戦力は「守備・リバウンドの職人」から「点を取れる選手」へシフト。ウイングは8人の激戦区に。
- 今季は「3ポイントが増え、ペースが上がる」方向へ。ただし序盤はチーム作りの時間も必要。

